2022 Valentine Stories

この企画は、2月末まで延長して開催中です!

LoveforceJewelryがバレンタインに贈る

輝く5つの物語

Valentain’s Dayは、恋人たちが愛を誓い合う日。世界各地でさまざまな形で愛を祝う風習があります。

欧米では、男性から恋人に花束やプレゼントを贈る習慣もあり、年代や性別を問わず ”気持ちを贈りあう日”として親しまれてきました。

 

今回は、デザイナーのTomokoがこれまでジュエリー制作を通じて出会った、本当に起きた素敵なエピソードが、5つのオリジナルストーリーに生まれ変わりました!

LoveforceJewelryがValentineに贈る{宝石にまつわる5つの輝く物語}をお楽しみください!

Story1

「20年後の結婚指輪」

 

結婚20周年に何が欲しいかと聞くと、意外にも妻は「結婚指輪」と答えた。

僕は、その申し出を、少し苦い気持ちで承諾した。今やっと伝えられる妻への感謝の気持ちとお祝いを、自分の小さな拘りで曇らせたくなかったからだ。彼女が言う「結婚指輪」とは、彼女が結婚して数年で無くしてしまったものだ。と、すぐに気が付いたが、僕は、すべて忘れた振りをして「いいよ」と言った。

小さな頃から、自分の意見や気持ちを言葉で表すことが苦手だった僕は、ぼんやりと空を見つめることが多かった。親に買ってもらった、宇宙図鑑で見たオリオン座を冬の夜空に見つけた時は、本に書いてあることが、本当だと言うことを知って胸が一杯になった。不思議な世界の秘密を、僕だけが知っているような興奮。それから、何度も友達を誘って天体観測をした。星座を見上げて感嘆する友達の横顔を見ると、お互いに黙っていても、何故か全てが伝わっているような気がして嬉しかった。言葉では決して言い得ない相手への気持ちまで。

それから、宇宙工学の道に進んだ後も、学校や仕事からの帰り道、冬になればいつもオリオン座を探した。都会では、小さい頃見た様に鮮やかには輝いてはいなかったけれども、僕にはそこにそれがあることは分かっているから、それで十分だった。

そして、彼女と恋に落ちて、結婚する時、二人の指輪にオリオン座大星雲を刻んで欲しいとデザイナーさんにお願いしたのは僕だった。オリオン座大星雲の中に幾つもある星雲。そのうちの二つが帯の様に重なる、プラチナのリング。帯の一本にはオリオン座の最も輝く星の二つが大きく掘られ、その周りには、生まれたばかりの小さな星々が無数に散らばっている。彼女の指には、シルバーと黄金の星雲がその後いつも置かれるはずだった…。

そんな浮かない気持ちを押し殺して、指輪を二人で受け取りに行った。笑顔の妻とデザイナーさんの間で開かれる箱を恐る恐る覗き込んだ時、僕は、思わず「ほう。」と驚きの声を出した。咳払いをして、まじまじとその指輪たちを観察した。それは、20年前と全く同じデザインの、でもその時よりもずっと星々が深く美しく輝いている気がした。

「どうせなら、お互いはめて差し上げては?」

という作家さんの言う言葉に照れながらも嬉しそうな妻。言われるまま、箱から摘まみ上げたその二本の小さな指輪をそっと妻の指輪にはめて、妻の目を見ると、指輪に刻まれた星雲の様に、瞳がうるんでいるのが分かった。無言で見つめる妻の目の中のオリオン座に、妻が何を言いたいのか、全て分かる気がした。妻も、慎重に、僕の薬指に指輪をはめた。

二人で出かけて、何度も見上げたオリオン座の光が、1300年かけて地球に届いた光だったように、口下手な僕のあの時の気持ちも、僕らのところに届くまで20年かかったのだろうか?

「星ほど遠くじゃなくてよかった。」そう言って、僕は、妻をそっと抱きしめた。妻は、どういうこと?と言ったが、僕は気にしなかった。

-LoveforceJewelry「20年目の結婚指輪」-

「私の中のクンツァイト」

 

今朝、いつも通り、朝の家事を一通り終えた私は、茶箪笥の奥にしまってある黄色いお茶の箱を取り出した。蓋を開けてみると、中身が空だった。

街に向かう電車は、車窓から、私の見慣れた景色を次々と投げ捨て、この街での、私の30年の人生もまた、呆気ないほどに後へと消えて行った。ここにいる誰も私を気にかけない。そのことは、愉快なことの様でもあり、不安でもあった。

そのお茶は、20年前、夫が初めての海外出張から帰った時、お土産に買ってきてくれたお茶と同じものだった。夫がそれを私に手渡した時、「そんな高級なものを買ってきて」と義母は文句を言ったが、一緒に飲みましょうと誘うと、その香り高さに、「さすが高いだけあるね。」とまんざらでもない表情で、お代わりをした。そのお茶からは、熱い南の国の風の香りがして、夫が働いて来た遠い外国を想像させた。銀座の本店からこっそり取り寄せた、本当に疲れた時にだけ、大切に飲むお茶。

身支度を整えて、冷蔵庫の総菜をいくつか見繕い、小鉢に分けてお盆の上に並べると、義母の部屋の襖を少しだけ開け、「お義母さん、お茶が切れたので、買い物に行ってきます。夕ご飯までには帰ります。」と、言うと、義母は、「はいどうぞ。お構いなく。」とテレビを観たまま言った。まさか、私がお茶を買いに、そんな遠くまで行くとは思っていなかったのだろう。自分が痛快な人間の様に感じた。

店に着くと、背の高いドアをくぐり、コロニアル風の広い天井にゆっくりと木目のファンが回り、本当に南の国に来たようだった。店中に漂う紅茶の匂い。私は迷わず夫のくれた紅茶の箱を指さした。爪が削れたままの乾いた自分の手に気が付いて驚いたが、私は、満足だった。食事をする時も、買わない服を眺める時も、適度に見守り、困ったことがあれば快く応え、ちょっと過剰なまでに親切で、全く気付かない振りをしながら、細部にまで神経を巡らせている。そんなサービスを受けることを、今日は自分に許したのだ。それは、私の知っている誰かとそっくりではないか。

そろそろ帰らなければと、有名な和菓子屋さんの前で足を止めた。「家族に買っていこうか。」ふと、頭をよぎったが、首を振る。と、隣のビルの入り口に貼ってある「ジュエリー展示会」のポスターが目に入った。宝石なんて、何年間も付けたことはないばかりか、家事をするのには邪魔でしかないと思っていたのだけれど…そのポスターの中の豪奢なペンダントの、燃えるような赤が、この街の店の美しい売り子たちの口紅の様に、私の中の小さな欲望に再び許可を与えた。「ご自由にお立ち寄り下さい」とあるし、目の保養になるかもしれない。とにかく今日は、キラキラとしたものしか見たくなかった。お茶一杯もこそこそと隠れて飲まなければいけない人生を自分に与えたくはなかった。

展示会場の奥で、主催者らしき人が話しているのを良いことに、さりげなく部屋に入ると、飾られているジュエリーを一つ一つ眺めて行く。それにしてもなかなかの値段だ。こんなジュエリーを日常的に身に着ける女性達は、どんな生活をしているのだろう。突然、今日一日の自分の勇気が、その首をうなだれた。

「やっぱり、帰ろう」そう思った時、桜貝色の薄いピンクのさした、ダイアモンドのような石を見つけた。周りの赤やグリーンの堂々と自信のある宝石たちの中で、ともすれば、誰もそれに気が付かないのではないかと思われるその石の、ピンク色の愛らしさが、まるで、春の桜の花びらの様に私の胸に差し込んて来た。

私が見入っていると、女性の声が後ろから、「それは、クンツァイトというのですよ。可愛らしいですよね!」と、言った。先ほどの主催者らしき女性だ。「この石を使って何か作るのですか?」「ええ、どのようなものでも、お客様のご希望のジュエリーに致します。」と、女性。

その石は見れば見るほど、本当に可愛いくて仕方ないのだった。まるで、初めて赤ん坊の息子の柔らかいほっぺを見た時や、娘に幼稚園の服を着せた時の様なあの気持ち、夫があのお茶を買いに、きょろきょろしながら高級店に入るのを想像する時の気持ち、義母が二杯目のお茶を飲みながらつい細めた目を、こっそりと見た時のような、あの感じ。私の周りの小さくて、かわいい者たち。私がこんなに可愛いものが好きだったなんて…。私は石に見入った。ころっとした、まあるいお腹のティアドロップ。いや、忘れていただけかもしれない。

顔を上げると、私はその女性の顔をまっすぐに見た。

「すみません、これを何か私に似合う様に出来ますか?」

女性は、にっこりとほほ笑んだ。

-LoveforceJewelry「私の中のクンツァイト」-

Story3

Story3 「待っていたルビー」

 

週末のランチタイム。久しぶりの休日、私の食事相手は、お気に入りのブランドを回って選んだ品物の入った、色も材質もとりどりのペーパーバッグ達だ。少し買いすぎてしまった気がするが、次の休みが何時になるとも分からない。今日一日、自分の心に滋養と休息を与えることが、また、明日からのパフォーマンスを上げてくれるのだ。袋の一つを手に取り、金色のリボンを解いて、買ったばかりの新色のリップスティックを取り出すと、キャップを取って、捻り、もう一度その色を眺めた。その老舗ブランドの新作は、他では見つけられない配色で、個性的なのに上品で、華やかなのにさりげない、春色のピンクだった。値は張ったが、身に着ければ、私の唇に特別な春をもたらしてくれそうで心が浮き立つ。「後で、友達に会う前に会う前に着けよう。」誰よりも早く、私が春を捕まえたことを、友達にも周りの人にも知らせるのだ。私は、それを化粧ポーチにそのまましまった。

食後のコーヒーが運ばれてくると同時に、テーブルの上の携帯電話が鳴る。しつこく鳴り続ける電話が途中で切れるのを願いながら通話アイコンを押すと、「お休みのところすみません・・・。」から始まる後輩A君の恐縮した声。「明日までにまとめておくように言われた資料のファイルがどうしても見つからなくて・・・。」時々、私は不思議だ。何故、人は一度ならず何度も確認したファイルの場所が、分からなくなるのだろう・・・。そんな時、私はこう思うことにしている。「だって仕方ないじゃない。私が出来るだけ。」

冷めてゆくコーヒーの湯気を眺めながら、後輩A君がファイルを見つけた頃には、友人との約束時間になっていた。電話を切り、友人に遅れるメッセージをし、お会計をした後、店の前でタクシーを捕まえると、気を取り直して、車内で先ほどの口紅を引いてみた。その色は、やっぱり自分によく似合う。と思った。

友人との待ち合わせのギャラリーに着くと、展示会は、友人の知り合いのジュエリー作家さんの展示会だった。会場内に入ると、何やら楽しそうに作家らしき女性と話している友人の後ろ姿が見えた。私は係の人に軽く会釈をして、しばらく一人で見て回ることにした。「へえ。オーダーメイドか。一点ものなのね。」端から順番に見ていくと、人気なのか、ほとんどのジュエリーの前に「SOLD OUT」の札が置いてある。いくつか気になる作品も、みな売り切れていた。

と、先ほど買ったリップスティックと同じピンク色の小さな宝石が、細いゴールドの鎖の先に、ティアラの様に散りばめられた、可愛らしいネックレスが目に入った。その色は、まるで今日の私のリップとセットアップした様だった。「どうしてこんな可愛いのに、まだ売れなかったのかしら?」値段を見ると、確かにデパートのジュエリーコーナーの様に気安く買える値段ではない。「なるほど。このせいね。」それでもこの世に一点しかないのなら仕方ない気もした。一点物。ということは、この子が他の人のところに行ってしまったら、もう会えないのか。と思うと、どうしても、その場を離れることが出来なかった。次のボーナスはもうすぐ入るし、また明日から一生懸命働けばいい。「私なら出来る。」そう思い、思い切って買うことにした。

「すみません。」と二人に声を掛けると、私に気づいた作家さんと友人が「あれ?もう着いてたの?声掛けてくれたらよかったのに。」と近づいてきた。「すみません、これ、頂けますか?」と、ネックレスを指さすと、「あ、このルビーの子ですね!わあ、良かった!これ、自信作なんです。」と、作家さんは言った。「あ、そうですよね。とても可愛いのに、売れ残っていて、ラッキーでした。」と、言う私。「ありがとうございます。すぐ箱にお入れしますね。」と、ネックレスを取り上げようとした作家さんが、「あれ?!」と、驚きの声を上げた。「どうしました?」「あの、すみません。これ、値段が間違っていました。」「え?」「これ、隣のものと値段が入れ違いになっていたみたいです。本当は、こちらなんですが…。」と、見せられた値札には、安くはないが、先ほどよりはずっとお手頃の値段が書かれていた。びっくりした私が、「え、これでいいんですか?」と聞くと、「ええ、ええ、その値段で結構です。つけてみられますか?」作家さんに薦められて、胸元に着けてみる。「どおりで売れないなと思っていたら…他の人を拒否して、お客様を待っていらしたんですね。」隣から友人が「ラッキー!」とはしゃいだ。「まさか・・・。」そう言いかけたが、でも…。もしかしたら本当にそうかもしれない、と私は思った。明日から、また猛烈に働く気でいた私は、手放しで喜ぶべきか考えてしまった。でも、もしかしたら・・・。幸せとは、必死に掴み取ろうとするだけではなく、時には、こんな風に私を選んで待っていてくれるのかもしれない。と思った。春が追いかけなくても全ての人に巡って来る様に。鏡の中のピンクのルビーたちが、キラキラと私の胸元で弾んだ。

-LoveforceJewelry「待っていたルビー」-

Story4

Story4 「エメラルドと蝶」

化粧台の引き出しに並べた、自分のアクセサリー達を眺めながら、私は途方に暮れていた。

先日、親友が亡くなった。その通夜の席での、彼女の旦那さんと息子さんの会話を思い出す。
「母さんのものは、着物も宝石も全部、___さんにあげるからね。」
と、すっかり腫れた目でお嫁さんに言う旦那さん。
「いや、いいよ。母さんとは趣味も違うし、もらっても___が困るだけだよ。第一、子育てで手一杯なのに、宝石なんて邪魔なだけだよ。なあ、___。父さんが持っていてよ。」
はい、とも、いいえとも言わず、「ええ、まあ」と愛想笑いする、彼女の複雑な表情の様に、私の中にも怒りと悲しみ、落胆と納得が混ざり合って交錯した。

彼女とは、高校からの同級生だった。「女が大学になんて行ったら、嫁にいけないぞ。」と言われていた、あの時代。私たちは、キュリー夫人とボーヴォワールになる夢を選んだ。同級生達が、花嫁修業や職業専門学校や短大に進む中、二人で進学塾に通った。大学は違ったけれど、殆どが男子学生の中で、勉強にスポーツに、海に山に、人一倍、生意気に、思い切り楽しんだ。女性にも働く場所が与えられた、まさに最初の時代の女性として、彼女は出版社、私は、大手メーカーの研究員として就職した。私達は、私達の存在が、生き方が、世の中を変えているんだという自信と誇りでいっぱいだった。

私は、息子のお嫁さんにあげたいと思っていた、引き出しの中のエメラルドのイヤリングをそっと取り出して手に乗せた。それは、亡くなった彼女が、一人目の子を流産しかけ、会社を辞めると決めた時、私にプレゼントしてくれたものだ。

「あなたは、今のままずっと輝いていてね。」

と、言った彼女の顔にも多くの気持ちが入り交ざっていた。「こんな高価なもの、もらえない。」と、断ったが、彼女は譲らなかった。

その後、私も息子を出産し、主人の設計事務所を手伝う為に、会社は辞めてしまったが、彼女は、そのことには何も触れず、折に触れ、私たちは連絡を取り合った。この引き出しに並べられた他のジュエリーにも、一つ一つに、その時々の私の人生の時間が詰まっている。それでも、私という人間がいなくなれば、時間を共有した誰かがいなくなれば、それらを知らない人にとって、何も意味の無い、ただの物になる。私や彼女の人生もまた、ただの古いデザインの石になる。

数か月後、私は、そのジュエリー工房までの、ゆるい坂道を海風の匂いを感じながら登っていた。

断捨離すると言って、全てのジュエリーを売ろうとした私に、主人が渡した一枚の名刺には、「リフォーム・リデザイン承ります」と書いてあった。事前の打ち合わせで、私の要望を聞くデザイナーの女性に、私はこう言った。「なるべく、今のお嫁さんの年齢に合うデザインにしたいの。それから、イヤリングは、ピアスに変えられるなら、ピアスにして欲しいの。イヤリングって無くしやすいでしょ?子供って、キラキラしたものや揺れるものが好きだから、母親の飾りをすぐ取っちゃうの。指輪は、何か他のものにならないかしら?息子たちは家事を協力しているみたいだけれど、子育てが終わるまでは、掃除、洗濯、洗い物、水仕事から離れる事なんてできないだろうから・・・。」矢継ぎ早に要望を伝える私に、「ええ、ええ、出来ますよ。」と、頷く女性。

あとからあとから、息子のお嫁さんにしてあげたいことが出てくる。それは、まるで、あの時の、子育てに全力だった私と友人の望みを全て叶えるかの様に。「宝石が邪魔だったわけじゃない。女性を捨てたわけでもなかった。ただ、キュリー夫人やボーヴォワールが教えてくれなかったことを、私たちは、必死でやっていただけなのだ・・・。」デザイナーの女性が、聞いた。「ほかにご要望はございませんか?」私は、こう答えた。「思いっきり素敵なデザインを。」

「こちらです。」そう言って、可愛らしいエメラルドグリーンのリボンを解いて、開けられた白い箱から現れたのは、友人からもらったイヤリングのエメラルドに、金色の繊細な羽根の蝶が二匹舞っている、ネックレスだった。「可愛い!」私は、思わず何度も声に出した。確かに、それは、彼女がくれたイヤリングの面影は一切無くなって、全く新しいものへと生まれ変わってしまったようだった。でも、その可愛らしさや、輝き、楽しさは、まさに私たちの青春そのものだった・・・。「そうよ、私達、こんなだったわよ。」彼女のそんな声が聞こえた。

-LoveforceJewelry「エメラルドと蝶」-

Story5

Story5 「贈る心のおくりもの」

婚約指輪を二人で見に行った帰り道、僕は彼女に尋ねた。

「どうして、あの指輪じゃ駄目なの?」

「なんとなく。」

「あんなに沢山種類があったじゃない。」

「でも、返品は出来ないし。」

そんな会話を続けた後、僕たちは、久しぶりに別々の部屋で過ごすことにした。突然の彼女の頑固さに苛立った僕は、家に帰って、独りごちた。「なんだよ、いつもはすぐ、どうしたらいいか僕に聞くせに。」

とりあえず、シャワーを浴びて、冷蔵庫からビールを出し、ソファに座った。「このソファだって、買ってよかったじゃないか。」結婚したら、子供が出来るまでは、暫くこの部屋で過す予定だった。少しずつ二人が住みやすい様に、彼女の希望したものをそろえた部屋。彼女はいつも僕に聞いた「ねえねえ、私はこれがいいけど、あなたはどう思う?」僕は、いつでもちゃんと考えて答えた。その甲斐あって、どうだろう、このソファだって、カーテンだって、とても居心地が良い。そんなことを考えながら、ソファの背もたれにあったパイル地のブランケットを引き寄せて掛けると、いつの間にかそのままソファに横になって寝てしまっていた。「この毛布、気持ちいいな。」とぼんやりと思った。

数日後、電話を掛けてきた彼女が言った。

「私、行きたいところがあるんだけど。」

彼女に連れられて来られたのは、海沿いのジュエリー工房だった。

「ここでは、石もデザインも相談できるらしいの。ここで、気に入ったのが見つからなかったら、最初に見た指輪でいいわ。」

と、彼女。「石?お店にあったダイアモンドじゃ不満足だったのだろうか。意外と欲張りだな。」と、僕は、少し緊張した。

「では、まず、色々な石を見ていただきますね。」

と、工房のデザイナーという女性が、様々な大きさの箱に入っている小さな宝石を僕たちの前に並べた。

「気になるものがおありになれば、仰ってください。」と言われて、彼女は、真剣にそれらを眺めた。まだ、何のジュエリーにもなっていない宝石や、原石を見るのは初めての僕は、まるでそれらが、小さな頃に庭や河原で見つけた赤や緑のガラスの破片や、不思議な形や色をした石ころに見えた。それをポケットに入れて家に持ち帰って、母からもらったお菓子の缶に入れていたのを思い出す。あの缶は、まだ実家にあるのだろうか。それとも、母が捨ててしまっただろうか。どちらにしても、目の前にあるこの石たちは、数日前に見た、カットされ、磨かれた、あの、有名店のショーケースの中のダイアモンドと比べたら、僕の思い出の様に、かすんで見えるのだった。

「うーん。」

と、再び悩む彼女。

「気に入ったのは、ございませんか。では、他の物をお持ちしますね。」

とデザイナーの女性がトレイを持ち上げようとすると、トレイに敷いてあった、柔らかい布がめくれ、その下で何かが光った。

「あ、何かありますよ。」

と僕が言うと、二人が、「え。」と、こちらを向いた。

「その布の下です。何かありますよ。」

女性は、トレイを置いて、布をめくると、白い箱の透明なガラスの中に、いびつな形をした信じられないほど透明な石がのぞいていた。

「あ、これは、ハーキマーですね。すみません。下に隠れていたようで。」

「それ、ちょっと見せてもらえますか?」

と、彼女が言った。女性は、「もちろんです。」と言いながら、布の上に、ピンセットでその石を置いた。それは、二つの多面体が右と左に突き出た、ダイアの様に透き通った石だった。その石を彼女と僕は、じっと見つめた。

「ハーキマーは、ニューヨークでしか採れない非常に貴重な水晶なんです。何億年もの時間を掛けてゆっくりと、自然に育まれたので、ダイアモンドの様に磨いたり、カットされなくてもこのような輝きをしているんですよ。しかも、これは双晶と言って、二つのハーキマーが、根元のところでくっついた珍しいものなんです。」

女性の説明を聞きながら、その、ハート形のような、双子のような石を見た僕たちは、顔を見合わせた。

「気に入った?」

と、彼女。

「うん。」

と、僕。

そうだ、彼女は、いつもこんな風に聞いて来た。ソファやカーテンだけじゃなく、あのパイル地のブランケットも、もしかしたら、バスルームにあるシャンプーや二人で飲むお茶でさえ。いつも二人にとって心地よい物を、僕より先に知っているのは、彼女の方だった。僕は、彼女の選んだものの中から、僕の好きなものを選んだだけだ。その度に感覚を研ぎ澄ませて。いつの間にか、僕の心地良いものに関する感覚は磨かれていった。この水晶がゆっくりと磨かれて来た様に。そして、いつか僕もダイアモンドの様になるのかもしれない。この水晶が自然に育まれて、ダイアモンドにも劣らないくらい輝いている様に。

帰り道、彼女と手をつなぎながら、海辺の道を駅まで歩いた。少しだけ潮風に春の匂いが混ざっていた。

-LoveforceJewelry「贈る心のおくりもの」-

Valentine企画 その1

 

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Valentine企画 その2

オーダーをご注文の方全員に、大切な方とのティータイムをイメージしたHappyBoxを贈ります。

HappyBox

 * HAPPY BOX *

★ホワイトセージの浄化スプレー1本 

★LoveforceJewelryオリジナルブレンドティー(BeautyAbundance)

★ビターチョコとシャンパンで仕上げた大人のチョコレートケーキがお二人分づつ入っています。

浄化スプレーは、ホワイトセージと水晶を配合したリフレッシュスプレーです。携帯に便利なサイズです。

石の種類は、アメジスト/シトリン/アクアマリン/ローズクオーツ/クリスタルの5種類で、どれが届くかはお楽しみに。

 

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Valentine企画 その3

販売期間:2022.2.7(Mon)~2.28(Mon)

大切な方に、Loveforcejewelryのギフトカードを贈りませんか?

遠く離れている方や、身近な方にジュエリーギフトカードを贈りませんか?

ギフトカードを受け取った方は、Loveforcejewerlyでのオーダージュエリージュエリー購入に使うことができます。

※ご自身でのご使用も可能です。

有効期限はございません。

デザイナー森田知子が厳選した宝石素材を使った作品の中からお選びいただけます。

既存の作品の中からお好みのものを選んでいただくことも可能です。

オンラインで、実物を見ながら選ぶことができます。

種類は、3種類(30万・20万・10万)のチケットがございます。

(期間限定チケット、詳しくは下記をご覧ください。)

贈る心のギフトカード

 

 

30万円

 

 

内容:通常価格〜35万円(税込)

・品質AAA以上(トップクラス)の宝石を使ったK18デザインRing         
・ボルダーオパールを使った作品(大きめK18ペンダントトップ/Ring /ピアス)
・南洋バロック真珠の指輪またはネックレス

 

 

20万円

 

 

内容:通常価格〜25万円(税込)

・10ミリ以上の美しい宝石(オパール/エメラルド/ルビー)を使ったデザインRing
・ハーキマーダイヤモンドを使ったペンダントトップ
・品質AA以上の宝石にメレダイヤモンドの付いたデザインK18ピアスとイヤリング

 

 

10万円

 

 

内容:通常価格〜15万円(税込)

・10ミリ以下の宝石を使った細めの一粒リングK18
・ハーキマーダイヤモンドのK18ピアス
・10万円クラスの美しい水晶群晶を使ったお部屋飾り

*素材やサイズのご相談も承れる場合がございます。詳しくは、ジュエリー相談時に、ご相談ください。

★下記のボタンからお申込できます。ギフトカードのコースを指定して、お申込み下さい。

LOVEFORCEJWELRYのこだわり

オーダーメイドは、「高くて難しい」と思っていませんか?

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末永く飽きの来ない、あなただけのパートナーとしてのジュエリーをお持ちになりませんか?

About Design

LOVEFOREJEWELRY では、あなたの未来予想図をお聞きしてからデザインすることで、輝く未来のあなたと今をつなげ、ステージアップした未来へ引き上げるジュエリーを製作しています。

素材と研磨

あなたのために大きな石から切り出し研磨することも可能です。熟練した研磨師と連携することで、お手頃価格の再研磨が可能です。 彫金素材は、プラチナ/K18/K18 ホワイトゴールドからお選びいただきます。

模型を使い相談を重ねる安心感

模型でのデザイン確認もしながら進める制作過程は、その都度あなたの未来予想図を明確にしながら行うので、安心してお作り頂けます。

「ラブフォース石選び診断」・素材のご提案・デザイン画制作が無料!お気軽にスタート!

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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

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